HOME 投稿 回遊性浮魚類の産卵・索餌海域における植物プランクトン大発生のメカニズムが明らかに!
水産学部小針・久米研究室では、熊本県立大学との共同研究により、回遊性浮魚類の産卵・索餌海域となっている北部薩南海域において、植物プランクトンが大発生するメカニズムを明らかにしました。この研究成果は、2021年および2022年に学術雑誌(Estuarine, Coastal and Shelf Science; Journal of Marine Systems)に掲載されました。
概要
鹿児島湾口部から竹島・硫黄島・黒島までに広がる北部薩南海域は、日本の水産資源を支えるマアジ・サバ類などの回遊性浮魚類の産卵域およびこれら仔稚魚の索餌海域となっています。このため、北部薩南海域の低次生産力はこれら回遊性浮魚類の資源変動に大きな影響を与えています。これまで、これら回遊性浮魚類が初期発育する春期になると、北部薩南海域では植物プランクトンが大発生することが知られていましたが、このメカニズムについては分かっていませんでした。そこで、鹿児島大学練習船南星丸を駆使し、数年間にわたる海洋観測と膨大な試料解析を行ってきました。
鹿児島湾に黒潮分岐流が移流すると、鹿児島湾口部で特異的に湧昇が発生して栄養塩が表層に供給されること、この栄養塩供給により珪藻および渦鞭毛藻などの植物プランクトンが増大することが明らかとなりました。また、これら植物プランクトン増大に伴い繊毛虫に代表される微小動物プランクトンも増大すること、増大した植物プランクトンがカイアシ類に代表される大型動物プランクトンによって消費されていることも明らかとなりました。これらの結果は、北部薩南海域の海域特性によって低次生産力が増大し、回遊性浮魚類にとって好適な餌環境を形成していることを示唆しています。北部薩南海域に回遊性浮魚類の大きな産卵場があることを本研究グループは発見しており、鹿児島大学練習船を駆使して我が国の水産資源を支える重要な海域を監視していく必要があります。
論文情報
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Akimasa Habano, Yoichi Arita, Fumihiro Makino
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