HOME 投稿 黒潮生態系を支える複雑な食物網の仕組み:黒潮パラドックスを解く鍵

黒潮生態系を支える複雑な食物網の仕組み:黒潮パラドックスを解く鍵

鹿児島大学水産学部水圏科学分野の小針研究室・久米研究室の研究グループは、既存の技術では解明できなかった「黒潮生態系における複雑な食物網の仕組み」を明らかにしました。鹿児島大学練習船により黒潮域から多様な動物プランクトンを採取し、微量な消化管内容物からも定量的に検出・識別できる遺伝子解析によって、植物プランクトンだけでなくこれまで見過ごされてきた動物プランクトンの糞やゼラチン質動物プランクトンも餌料源であること、補足的な餌への嗜好度のちがいによって餌に対する資源分割を可能にしていること、優占するカイアシ類に加えてこれまで過小評価されてきた尾虫類・ヒドロ虫類が食物網におけるエネルギー経路の重要なハブであることを発見しました。これまで、貧栄養で餌が少ない黒潮を多くの回遊性魚類が利用する現象は「黒潮パラドックス」と呼ばれ大きな謎とされてきました。今回の発見は、黒潮域におけるこのような食物網構造が魚類への安定的なエネルギー供給を促し、飢餓に対して脆弱な仔魚を育むのに適している可能性を示唆しており、黒潮パラドックスを解く鍵の1つであると考えられます。

 

この研究成果は、英国科学誌Scientific Reportsのオンライン版にて12月1日に公開されました。

動物プランクトンネット曳網の準備
遺伝子解析の対象となる動物プランクトンの識別・分別作業

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