錦江湾探検隊
錦江湾探検隊って?
もっと知りたい錦江湾
第1回フォーラム報告
錦江湾活用術
コラム 知らなかった錦江湾
とれたて情報

 

鹿児島大学水産学部海洋社会科学講座 佐野雅昭
立派なサイズの養殖ブリ

錦江湾の養殖業とその特徴

 錦江湾では主にブリとカンパチが養殖されています。ブリは桜島の北側(湾奥側)、カンパチは南側(湾口側)と養殖場が綺麗に分かれて分布しています。これはカンパチの方が高水温で酸素の多い海水を好むからです。錦江湾の養殖業は1960年代前半ごろに始まりました。1980年代前半からカンパチ養殖が始まり、あっというまに広がっていきました。
 今では錦江湾は全国でも最大のブリ・カンパチの産地となっており、ここだけで全国生産の2割を占めています。錦江湾は世界を見渡しても有数の養殖産地なのです。特にカンパチに関しては全国生産の60%のシェアを誇っています。錦江湾のカンパチを日本中の人が食べているのです。
 これだけ養殖業が盛んな理由は、その恵まれた環境条件にあります。錦江湾は、年間を通して暖かく酸素をたくさん含んだ綺麗な海水に恵まれています。また深海湾であり、沿岸近くの養殖場でもイケスは非常に深い水深帯に設置され、漁場環境が良好に保たれているのです。
 また養殖業に関わる漁業者さん達も若くて活気があります。全国的に見ても、これほど若くて元気な漁業後継者が残っている地域は他にはそうは見あたりません。こうした若い力も、錦江湾を力強い生産の場としている大きな理由です。

様々な環境改善の取り組み

 しかしそうした恵まれた環境に甘えてばかりいては、いつかこの綺麗な錦江湾が失われてしまうかもしれません。
 そこで養殖業でも環境を守っていくために様々な取り組みが行われています。まず餌料の改善が進められています。これまでは冷凍の生魚と魚粉を混ぜたモイストペレットといわれる餌料が中心でしたが、これはどうしても海を汚してしまいがちでした。そこで最近ではより環境に優しいEPといわれる餌料への転換が進められています。EPは水に溶けず、また沈まないために、食べ残しが少なく海水も汚さないのです。またEPで育てられた魚は肉質も良くなります。そこで現在こうした餌料に少しずつ切り替えているのです。
 魚類養殖場に海水を浄化する機能を持つ昆布の養殖施設を併設する取り組みも始められました。これは「海の森作り」運動と言われており、養殖業者が自主的に取り組んでいます。暖かい鹿児島の海でも昆布は立派に育つのです。また多くの水産生物の幼稚仔の育成場となるために「海のゆりかご」と呼ばれるアマモ場の造成を行っている漁協もあります。
 養殖業は綺麗な海がなければ成立しない環境調和型の産業です。綺麗な錦江湾を守ることは、養殖業者の暮らしを懸けた願いでもあるのです。

 

こんなに大きなイケスで魚を飼っています。
 

いろんな種類のエサを
バランス良く与えています。

 

エサは機械で与えています。
 

EPと呼ばれる海を汚しにくい
新しいタイプのエサです。