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鹿児島大学水産学部資源育成科学講座 小針 統

 

目に見えない世界の四季

 紺碧の錦江湾に対し、私たちは四季の移り変わりをはっきりとは感じませんが、海に漂いながら流れに身をまかせるプランクトンたちは、私たち人間よりもずっと敏感に季節を感じています。
 寒さが和らいでくる頃、海底で眠っていた夜光虫やミジンコたちが目を覚まします。どちらのプランクトンも、棲みやすい環境になると、自分と同じ遺伝子を持つ分身「クローン」をどんどん作りだして、あっという間に増える能力を持っています。春の赤潮は、夜光虫がこのようにして増え過ぎた結果です。しかし、梅雨が終わる頃には夜光虫もミジンコもあまり見られなくなります。棲みやすい時期が限られている彼らだからこそ、一気に自分の子孫を繁栄させる能力を持っているとも言えます。
 表層の栄養分が不足していく夏は、小さいプランクトンが活躍する世界です。彼らの偉いところは、どうしても栄養分が足りなくなると他のプランクトンが出した排泄物を「リサイクル」して成長できることです。資源の少ない時期になると、本能的にリサイクルすることを知っているのですから、人間はプランクトンに学ぶべきかもしれません。このような時期に雨が降ると、大地から栄養分が補給され、まさにプランクトンたちにとっては恵みの雨となります。秋から冬は、錦江湾の1年で最も華やかな季節です。植物プラントンの仲間である珪藻は、深層から汲み上げられた栄養分を使ってどんどん成長します。専門家は、これを桜が咲くような花盛りに例え、「ブルーム」と呼びます。この時、桜島からの灰が海に降ると、珪藻に絡まって重くなり、錦江湾の海の底へ雪のように次々と落ちて行きます。これが「マリンスノー」です。この落ちた珪藻は、エビ類の大切な餌となります。

 

錦江湾の自然との共存

 錦江湾名産のキビナゴやアカエビなど、天然魚介類はプランクトンを食べなければ生きていくことができません。ですから、私たちは魚介類を介してプランクトンの恵みを貰っていることになります。時には厄介なことをやらかす彼らですが、私たちは錦江湾に生きるプランクトンをもっと知り、共存していく知恵が必要です。

 

梅雨時に河川から流入した淡水で塩分が低くなると繁殖するウスカワミジンコ。カタクチイワシやキビナゴなどにとって格好の餌となる。  
 
薬品で染色して特殊な光をあてると輝き出すプランクトンたち。栄養分が少なくなると、500分の1ミリにも満たない微小なプランクトンたちが活躍する世界になる。  
 
特殊な光をあてると光り出す中心目珪藻。赤色~オレンジ色に見えるのは葉緑体。錦江湾の生態系はこの生きものが作り出すエネルギーに頼って生きている。