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鹿児島大学水産学部 大富潤(左)江幡恵吾(右) 暖かい海にすむシイラ。
錦江湾の中にまでは
なかなかやって来ない。
雄は成長するとあたまが
出っ張ってくる(下)


海の中を知りつくし、工夫をこらす漁師さんたち

 トントコ網

 最大水深が230mを超える“どんぶか”の海、錦江湾。ここでは、小型底曳網、まき網、船曳網、刺網、小型定置網、一本釣り、はえ縄、採貝など、いろんな漁業が行われています。11ページに出てきたナミクダヒゲエビは、トントコ網と呼ばれる小型底曳網で捕られています。
 トントコ網の操業方法は独特です。深い海の底にいる生き物を捕るため、船尾から2000m近くにもおよぶ長いロープを後ろにのばして網を海底まで下ろし、それをゆっくりまきとります。網の口が大きく広がり、網がきちんと海底をはうようにしなければ、エビや魚はうまく捕れません。このロープをたくみに操るのが漁師さんの技。誰にでもできる簡単な仕事ではないのです。
 ロープがまきとられ、海面に姿を現した網が船に上げられる瞬間は、何回乗船してもワクワクドキドキです! 真っ赤なナミクダヒゲエビ、ジンケンエビ属の1種(地方名シバエビ)や他の深海性のエビで網の中が埋めつくされることもあれば、銀鱗がまぶしいオオメハタ(地方名メバル)やマルヒウチダイがたくさん混じることもあります。
 同じ錦江湾深海底の生き物でも、すんでいる場所は種類によって微妙にちがいます。
 「あの場所で網を曳けばあれが捕れる。」
 毎日錦江湾で働いているトントコ網の漁師さんたちには、それぞれお気に入りの漁場があります。

 サヨリ漁

 錦江湾には、春先にしか行われない期間限定の漁業があります。それはサヨリ漁で、2隻の漁船がペアを組み、左右に分かれて走りながら1つの網を曳きます。サヨリは海面すれすれを泳ぐので、網も海面に浮かぶようにします。
 また、この時期のサヨリは浅いところにいるので、水深が人間の背たけくらいしかない海岸すれすれのところが漁場となるのです。船の底が海底の砂にめりこんでしまっては大変。サヨリ漁は“海の浅さ”との戦いでもあるのです。
 おもしろいことに、海岸すれすれでサヨリ漁を行っているのは、ふだんは深海で操業しているトントコ網の漁師さんたちなのです。いちばん深い場所からいちばん浅い場所まで、錦江湾の漁師さんたちは海の中を知りつくしているのです。

 曳縄

 擬餌針を漁船から張り出した釣竿から曳き回して行う漁業を曳縄といいます。この漁業は、錦江湾の湾口部で行われることが多いです。対象とする魚は、カツオやシイラなどです。
 漁師さんは、擬餌針を本当の小魚のように泳がせて、漁獲対象とする魚をだますために、様々な工夫をこらしています。擬餌針に動きを与える道具には、いろいろなものがありますが、ここでは“潜航板”を紹介します。
 潜航板は、水中で流れの抵抗を受けて沈み、左右に振れまわる運動をします。それによって、擬餌針が対象魚のいる水深帯に沈み、潜航板からのシャクリによって小魚のような動きをします。最近では、市販のプラスチック製の潜航板が使われることが多くなりましたが、昔は漁師さんが桐の木を削って自分たちで潜航板を作っていました。
 曳縄で使う道具は簡単に見えますが、その扱い方を取得するにはかなりの経験が必要で、漁師さんの秘伝の技が結集されています。

 

ロープを操る漁師さん
 

オオメハタとマルヒウチダイ。
小さいものはから揚げがおいしい。

 

網が海面を走るサヨリ漁
 

捕れたてのサヨリ
 

舟形をした潜航板(上)と色とりどりの擬餌針