種子島沖の海洋観測と深所性海藻の資源調査実習

種子島沖を航行する南星丸

附属練習船 南星丸 (大学院連合農学研究科 寺田竜太)

鹿児島大学水産学部附属練習船南星丸では,医学部の専門家の監修の下で,新型コロナウイルスの感染症対策の基準を満たした上で乗船実習を実施しています。令和3年度は,前年度よりも多くの事項で感染症対策の基準を満たすことが可能になり,活動範囲が大きく広がりました。南星丸ではこれまで,種子島沖の海洋観測と深所性海藻の資源調査実習を長年にわたって実施してきましたが,今回この実習航海を2年ぶりに再開しました。
海藻類は一般に,海面付近から水深10m前後の浅所に繁茂しますが,海水の透明度が高い場所では,より深い場所でも見られことがあります。種子島西方沖の海域には,水深30〜50mにかけての平坦な海底(島棚)が広がっていますが,海水の透明度が非常に高いことから,稀少な深所性の海藻類が数多く発見されています。最近の研究では,新属日本新産種のボニンアオノリRyuguphycus kuaweuweu(文献1,緑藻アオサ科)や新種マゲカバノリGracilariopsis mageshimensis(文献2,紅藻オゴノリ科)などが発見されています。
今回の調査でも,これらの種類を含む稀少な海藻類が多く確認され,参加学生はこの場所でなければ見られない希少種を興味深く観察していました。これらの調査結果は学生教育のみならず,環境省レッドリストやモニタリングサイト1000の委員を兼ねる教員の研究を通して,新種発表や絶滅危惧種の評価,温暖化のモニタリングにも活用しています。南星丸では,鹿児島周辺の恵まれた海洋環境をフィールドに,これからも乗船実習教育を続けていきます。
今回の調査内容に興味のある方は寺田研究室の門を叩いてみてはいかがでしょう?

文献1:Hiroshi Kawai, Takeaki Hanyuda, Ichiro Mine, Shinichi Takaichi, Ryuta Terada, Taiju Kitayama 2021. Morphology and molecular phylogeny of Umbraulva spp. (Ulvales, Ulvophyceae), and proposal of Ryuguphycus gen. nov. and R. kuaweuweu comb. nov. European Journal of Phycology 56: 1–11 DOI: 10.1080/09670262.2020.1753815
文献2:Masahiro Suzuki, Ryuta Terada 2021. A new flattened species of Gracilariopsis (Gracilariales, Rhodophyta) from Japan. Phycologia 60: 158–163 DOI: 10.1080/00318884.2021.1880755

ドレッジ調査の様子
ドレッジで水深35mから採取された海藻類(中央右側のトレイは緑藻ボニンアオノリ)
CTDを用いた海洋観測の様子

 

 

 

 

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