NO53.クエタマ 金井怜欧(水圏環境保全学分野4年生)
- Data
- 釣り人金井怜欧(水圏環境保全学分野4年生)
- 日時2021.11上旬
- 釣り場下甑島某所
- 対象魚クエタマ
- 釣り方泳がせ
1.11月上旬、研究室の野外調査で甑島へ1泊2日で行った時の出来事。野外調査が終わり、宿で一休みした後、下甑島某所にて。
その日は小魚が水面に湧いてはいるものの、イカなどのフィッシュイーターが居る雰囲気はなく、お世辞にも良好とは言えない状況だった。
案の定、ブッコミ、エギング、アジング全てに反応がない。
更には冷たい雨風が容赦なく打ち付け、皆が長くは釣りを続けられないことを悟った。起死回生の一手を打つべく、私は泳がせ釣り用の仕掛けを組み、キンギョを針に刺して足元に落とした。
そのポイントの底質は砂地であるため、来るのはシーバスくらいだと踏みドラグを大きく緩めて放置していた。その後しばらく続けていても相変わらず集まっているのは小魚ばかり。
私は半ば諦めつつ泳がせ仕掛けから少し離れたところにいた。
「今日はダメか。」
そんな考えが頭をよぎった矢先のことだった。
泳がせ仕掛けから甲高いドラグ音が鳴り響き、竿が地面に転がった。まさかの事態に一瞬判断が遅れたものの、直ぐに竿を手に取りドラグを締め直してファイトを始めた。
体の芯まで強く竿を叩く感覚が響き渡る。
私は興奮を覚えながらもラインのテンションを張り、フックアウトしないことだけを考えてリールを巻いていく。リールを巻いていくにつれて表層に魚の白い腹が見え、魚種が認識できる水深まで上がってきた。
当初私はランカーシーバスが掛かったと思っていたが…
「―違う。根魚だ。」
私はまさかの事態に動揺しつつも最後のやり取りを楽しみ、同行してくださっていた奥西先生がタモを組み終わるまで魚の頭を水面に出して弱らせることに全力を注いだ。
そして遂に、見事ランディング。
鰭条数の計数など、種同定は行っていないため断言はできないものの、体色などの特徴から恐らくクエタマだと推測できた。その後体長を測ったところ62cmであり、ハタ系の魚では自己記録を10cmほど更新した。
写真撮影と血抜きを終えたと同時に雨足が強くなり、我々は興奮も冷めやらぬまま宿へと急いで帰った。

2.宿に戻り、すぐに魚を捌き始めた。私はヌメリ、固い鱗や骨、更には厚い身に悪戦苦闘。捌いている最中、私は驚きのあまり声を上げた。なんと胃袋からエギが出てきたのだ。ルアーマンがしゃくっているものを食いちぎったのか、もしくは底に沈んでいたものを食べたのか。などと私は様々な思考をめぐらせながらも必死に包丁を動かし、何とか捌き終えた。

3.いよいよお楽しみの実食。
脂がしっかりと乗りつつ嫌味の一切ない味に舌鼓を打った。もちろん釣れたこと自体も大変嬉しかったのだが、同行したメンバーが皆喜んで食べてくれたことがこの上ない幸せだった。

4.今回この魚を釣り上げたことで、「釣りに絶対はない」ということ、どんな状況でも諦めないことの大切さを強く認識させられた。
甑島の海の豊かさ、雄大さはかけがえのないものだ。甑島を訪れるアングラーは釣りを存分に楽しむと同時にこの素晴らしい環境をいつまでも守るべく、釣り場は綺麗に保つようにしていただきたいし、私もそうしていくつもりである。
今回は刺身とカマ焼きで頂いたのだが、皆食べることに夢中で、奥西先生以外料理の写真を撮り忘れていた。次またこのように大きな魚を釣った際は食べる前に写真を撮ることを心に留めておきたい。
