現地報告 養殖事業に関する調査

昨年度に引き続き、フィリピン政府によるオイルスピル被害後の生計復興プログラムのひとつである養殖事業の現状について調査を実施した。対象地は、ギマラス島ヌエバ・バレンシア地区イグダラップダップ村である。この養殖事業はフィリピンの水産局が支援しているもので、19年2月に住民グループが組織され52名が組合員となっている。
ミルクフィッシュの養殖が中心であり、継続的な出荷が行われている。昨年の調査時点では出荷は1回行われていただけであったが、現在では半年サイクルでの出荷体制が確立されており、年2回の出荷で約3トンの水揚げがある。成魚は、100ペソ/kgで流通業者に販売されており、それらは全量島消費向けに流通される。
種苗調達と飼料は、昨年までは支援機関であるフィリピン水産局から無償提供されていたが、現在では援助に頼らず自己資金での調達が可能となっている。
種苗は、近隣の養殖漁家から5インチほどの大きめのサイズを購入している。生残率は90%以上と育成のリスクは非常に小さい。また、飼料は民間業者から購入している。人件費はこれまでと同様、労働種類ごとにローテーションが決められ、組合員が順番に担当する仕組みとなっている。ローテーションに参加しているのは36名であり、警備や生け簀の清掃などに従事して賃金を得る。組合員は沿岸漁業を主とする漁業者であるが、この事業によって補完的な収入を得ている。また、出荷後の収入のうち50%がこのシステムで労賃に向けられるが、残りの50%は自己資本として貯蓄にまわされる。
開始当初は援助資金に頼っていた養殖事業であったが、現在では運転資金を事業の収益から捻出しており、加えて貯蓄も可能となっていることなどから、この事業は当該地域の自立的な産業として軌道にのりつつあると言えよう。

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