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2015年11月27日

研究教育

トカラ海峡で黒潮の海洋環境と生態系の謎に挑む


中村啓彦

概念図PB050169

海洋表層の一次生産を維持する仕組みとして乱流混合や湧昇がある。これらの海洋環境は,海洋深層から海洋表層へ栄養塩を供給する働きをしている。亜熱帯循環は沈降流域なので,海洋表層の一次生産が低い。そのため,亜熱帯循環の一部である黒潮も一次生産が低いと考えられる。しかし,近年の小針ら(鹿大水産/水圏科学分野)の研究によって,黒潮内部の動物プランクトンのバイオマスは,沿岸域のそれと同等であることがわかってきた。これはなぜだろうか?黒潮内部で起こる鉛直混合や湧昇といった海洋環境から一次生産,高次生産につながる黒潮生態系の仕組みを解明しなければならない。

私たちは,この問題を解き明かすために,かごしま丸による海洋観測を,国内の4つの研究機関(九大応用力学研究所,愛媛大沿岸環境科学研究センター,富山大理学部,水産総合研究センター・東北水研)と共同で,今年度からはじめました。研究プロジェクト名を,「海洋混合学の創設(新学術領域研究)」といいます。第1回目の今年は,大学院洋上観測乗船実習(鹿大水産学研究科)と洋上セミナー(連合農学研究科)で乗船した修士課程(7人)と博士課程(4人)の学生とともに,研究グループから総勢20人が参加して,11月14日~22日まで観測を実施しました。この観測で取得したデータは,研究者のみならず修士・博士課程の学生の研究として,世界的な成果を目指して解析されます。

私たち水圏科学分野は,このような海洋学を志す学生を求めています。