Let’s Enjoy! 水圏環境保全学分野4年 中塚宇宙

南米の大型鯰の一角、レッドテールキャットフィッシュ
闘の末、釣り上げたツクナレ
今年の夏になんとか釣れたタライロン 淡水シーラカンスの異名を持つ古代魚の一種
こちらも古代魚、ピラルクー 現代では金を積めば釣れる魚になってしまいつつある
アマゾンに似つかわしくない激流域にのみ棲む大型の牙魚ペーシュ・カショーロ

パプアニューギニアの親友達 基本的に言葉の通じない奥地では釣りがコミュニケーションツールになる
水圏環境保全学分野 4年 中塚宇宙

僕は中学生の頃に読んだ本をきっかけに長期休みの度に釣竿片手に海外を旅しています。それについて紹介しようと思います。

「死ぬまでにこの3種は絶対に釣る!」

中学生の頃にそう決心した僕は大学入学後、都合7回、約9ヶ月、魚を釣ることだけを目的に海外を旅した。基本的には1人で、釣り道具とお金だけを用意して取り敢えず行ってしまうのが自分のスタイルで、何日にどこで何をしてというのは全くない。見たい魚の生息地を調べ、現地で聞き込みをし、満足いく魚に出会えるまで各地を放浪する。現代では様々なエコツーリズムが行われており、釣りも例外ではない。馬鹿高いお金を払い、現地人がアレンジしてくれた船やポイントで何不自由することなく短期的に釣りをするというものだ。現代では、これを利用すれば大抵の魚は比較的簡単に釣れてしまう。しかし、僕はこのツアーに真っ向から対立した、協力者から釣り場、値段の交渉まですべて自分で行うという旅をしている。前述したツアーも経験した上で、このスタイルを選択した。それは、大学生という時間とエネルギーに溢れた時期にいわば金で時間を買うというツアーに行くのはおかしいと思ったから。最悪、定年後でもツアーには参加できる、しかし旅は今しかできない。死ぬときに後悔だけは残したくないという思いで旅を始めた。その中でも特に思い入れがあるのは3度、計5ヶ月間旅をしたブラジルと、2回計3ヶ月間旅をしたパプアニューギニア。今回はブラジルでの旅を紹介します。

生物多様性や広大な密林の代名詞とされているアマゾンという言葉には子供ながらにとてつもなく魅かれ、憧れた。幾度も旅を経た現在でも底が全く知れない国でもある。ブラジルで有名な釣魚は世界最高のゲームフィッシュの呼び声高いピーコックバス(現地名ツクナレ)や水族館で見るようなピラルクといった古代魚、最大3mにもなる巨大ナマズです。これまでの僕の旅でもこれらの魚を狙ってきた。そしてルアー釣り大好きな僕の最初の目標もやはりツクナレだった。といっても現段階で明確に分類されているものだけで15種類おり、様々な水系で釣っているとどれにもあてはまらないんじゃないか?というようなツクナレに出会う事も珍しくなく今後もその種数は増え続けるだろうと言われてている魚。その中でも上流部に棲む最大種のキクラ・テメンシスというツクナレがいる。この魚は先述したように世界的な名魚なのでいわゆる「ツアー」を使えばさほど難しい魚ではない。しかし、僕が初めて旅をした春休みは完全に時期はずれで、雨季に突入してしまっていたせいで水位が上がっていた。乾季には表出している大きな森が雨季には沈んでしまう。広大なアマゾンで、それほどまで河が氾濫してしまうと魚に出会う確立がどれほど低くなってしまうかというのは想像に難くないだろう。結果、この時は最大でも70cmに満たないサイズで終わってしまった。そして昨年12月末、乾季が煮詰まっているであろうベストと思われるタイミングで再戦に向かった。が、前回よりもかなり上流部にきたこともあり、(アマゾン河は下流から減水し、下流から増水し始める)水位はまたも下がっておらず状況はかなり厳しい。

「船とエンジン貸してやるから勝手に釣り行ってこい」

と放任主義のブラジル人らしい言葉により挑戦が始まった。船舶免許は勿論、エンジンの仕組みや現地式のカヌーの漕ぎ方が分からない僕は数日間事故りまくってまともに釣りにならず、毎日無事に生き帰る事が目標になっていた。なんとか使いこなせるようになって数日、釣竿を振り続け、長距離カヌーを漕いだ腕は限界に達しており、指もかなりひどい腱鞘炎になっていた。それでもルアーを投げ続け、ある日大物が水面のルアーに飛び掛ってきた。爆弾とも花火とも形容されるツクナレのそれは凄まじく、一気に緊張感が増した。反射的に糸を引き、ハリを魚の口に掛けることに成功した。大体の場合は仕掛けがかなり強いので勝負あり。しかしこの時一人で釣りをしていたので誰もカヌーを漕いでくれる人がいなかった。そのため強靭な引きのツクナレの前にボートは魚の赴くままに引きずられ、ジャングルに突っ込み、魚に倒木の下に逃げられてしまった。最初で最後のチャンスだったかもしれないと精気が抜けて呆然と立ち上がり船上をフラフラと移動していると滑って転んだ。満身創痍だった。ルアーを回収してみると高強度のスプリットリングが伸ばされていた。

その次の日、図らずも最終日となってしまうその日までどうすれば釣れるのか考えたが、考えがまとまらないままに朝が来てしまった。壊れる可能性のあるパーツは極力排除し、針もスプリットリングも最強のものを移植した1つのルアーと心中することだけを決めていた。そして前日のポイントから少し離れた場所で同じやつかそれより小ぶりか、ツクナレが飛び出してきた。掛けた瞬間想像より大物である事を確信し、船が引きずられ、倒木の下に逃げ込まれることを覚悟した上で、口から針だけは外れないように何度も強く竿を煽った。が、前日と同様に倒木に逃げ込まれ、今度は根掛かりまでしてしまった。どうやっても外れないので、リールを故障覚悟で水に突っ込み、針を外そうとした。その瞬間、糸が沖に向かって走り始めた。瞬間、本能的に一気に糸を巻き取り、カヌーの上に一気にブチ抜いた。

戦い尽くしたその魚は全く暴れなかった。GT用の極太針は捻じ曲げられていた。それを見届けてから誰もいない、静かなジャングルで絶叫した。もっと大きな魚はいる。けど、操船からポイントまで何から何まで分からないところから始まり、旅の最終日に試行錯誤の末釣れたこの魚はこのときの自分一人で釣れる限界の魚だと断言できる魚だった。

後にもっと大きな魚を釣ることになるかもしれないし、ツアーを使えばもっともっと簡単に大きい魚を釣れるだろう。だけど、今後そういう魚を釣ろうともこの魚の価値が自分の中で小さくなる事は絶対にない。記録を更新したからそれ以前の魚は忘れてしまう、ではなく、1匹1匹の魚が違うベクトルで一番であるような魚を釣りたいし、そのための旅を続けようと思う。

今年の夏休みもそういう魚に出会う事が出来た。僕は今4年。今年は卒論もあるし、旅に出るのは諦めていた。でも、教授に相談したら快く旅に出させてくれた。僕がいない間に迷惑を掛けた友人を含め、理解ある人に恵まれた事に感謝した。水産学部は特に特殊性の高い学部なのでそういった教授、友人に恵まれる可能性は必然的に高かったと思う。将来水産系の仕事に就きたいから、興味があるからという理由以外にもこういう選び方をするのも良いと思うし、僕はそれがこの大学に入って一番良かったことだと思っている。

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