ギマラス島重油事故関係 第11弾

【速報第11弾:小山次朗教授(平成19年4月19日)】

フィリピン ギマラス島重油流出のその後
重油流出事故から7ヶ月経った2007年3月14日から15日まで試料採取のため、江幡助教と院生2名とともに再びギマラス島を訪れた。(写真1)今回は、UPV側で長期モニタリングを担当しているIda Pahilaさん達のグループと一緒にサンプリングを行い、試料を分割して互いに分析できる項目を測定した後、情報の共有を行うこととした。
サンプリングの対象とした地域は、流出油の漂着量が多く、沿岸生態系に大きな影響があると考えられ、前回(2006年9月及び11月)試料採取を行った、ギマラス島南部の海岸であった。海岸に到着して一望した時には、岩に少しこびりついているものを除けばほとんど漂着油は発見できなかった。しかし、海岸の砂を10~20cmほど掘るとまだ漂着油が見つかり、明らかに油臭を感じた。また、一部の海岸では未だに油膜が広く認められ、油臭がした。フィリピン側では漂着油の回収が終了したとしているようだが、まだ相当量の漂着油の残っている海岸のあることが実感できた。今回は、貝類などの生物に加え、海岸の底質(植物防疫所の許可を取って)を持ち帰り、前回までの分析結果と比べ、生物あるいは底質中の石油成分量にどのような変化が起こっているのか明らかにする予定である。

砂の下層に黒く見える部分は漂着油であり、掘った穴にたまった海水には油膜が生じた
写真左側は船の舳先で、その下の海面に油膜が観察される



前回までの調査では、沿岸地域あるいは海岸に油処理剤を散布していることを現地での聞き取りで聞いていた。その生態系への影響が懸念されることから、沿岸の浅い海域に処理剤を散布することは通常行われないが、今回の調査で初めて処理剤の散布された現場を見た。そこはマングローブ林であり、マングローブにどのような影響を及ぼすのか、少し心配な面がある。また、流出事故から既に半年以上が経過していて漂着油が風化していることから、この時期に処理剤を散布しても効果が得られるのか疑問である。

写真中央部の水たまりに白く見えるのが、散布された油処理剤

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