ギマラス島重油事故関係 第4弾

【速報第4弾:佐野雅昭教授(9月18日)】

ギマラス島で発生した油濁事故に関する地域経済への影響の速報です。ギマラス島の沿岸地域はほぼ漁業専業地域となっています。また当該地域の漁業は、沖合いの漁場を利用するような大きな漁船を持たず、マングローブ域に存するエビ・カニ類などの沿岸資源に依存した零細な経営体が大勢を占めています。沿岸漁村は島内で最も貧困な地域でもあり、今回の事故は漁村社会に深刻な影響を与えています。まず多くの漁民が油濁によって沿岸部の重要漁場を失いました。収入機会を失った漁民の生活維持が緊急の課題となっています。次に、周辺漁場で漁獲される漁獲物の安全性が疑問視され、市場での評価と価格が低下しています。さらに油臭を吸い込むことによるによる漁民の健康被害が懸念されています。
被害が深刻な地域の漁民は油臭を避け避難キャンプでの集団生活を行っており、フィリピン大学の医療チームも巡回検診を行っています。フィリピン各地からコメなどの援助物資が集められ、漁民達に支給されています。操業ができなくなった漁民達は1日あたり300ペソ(約700円程度)の日当で事故を起こしたタンカーの所有企業に雇用され、油濁処理作業に従事しています。しかしその雇用者数は限定されており、漁業に変わる安定した収入機会となっているわけではないようです。
漁民の安定した生活を取り戻すためには、沿岸域特にマングローブ域の環境と資源の回復がなにより望まれます。しかし視察した結果、それにはかなり時間がかかりそうな印象を持ちました。漁民の生活と漁村社会の維持のために、強力な行政的支援が必要でしょう。
UPVの社会科学分野の研究者達は、このような状況をより客観的に把握し適確な政策提言を行うために、被害額など社会経済的な側面からのアセスメントを行いつつあります。我々もそうした取り組みに協力し、一刻も早い被害からの脱出に貢献したいと考えています。

油を吸った砂は袋に詰めて回収されるが、集積所においてそこから油が漏れだしている状況(佐野)

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