現地報告

本年度は、パナイ島北部にあるボラカイ島を事例に、観光開発がボラカイ島の地域社会へ与えた社会・経済学的影響について、概況調査を実施した。
ボラカイ島では1980年代より、フィリピン政府の策定した「観光マスタープラン」に沿って観光開発が行われるようになった。観光施設が相次いで建設される一方で、観光産業の経営資源である自然環境等を保全することを目的に、海岸線の使い方や建造物に関する規制が条例化されるとともに、下水処理施設の整備や海砂流出の管理が行われるようになった。また、2009年よりボラカイ島周回道路の建設が開始されるとともに、近接するカテクラン空港の拡張工事が実施されるなど、観光インフラの整備が進められている。
その結果、生活スタイルの変化(半農半漁からサービス業への従事)、魚介類供給の構造変化(自給自足から一大消費地への変貌)、生活水準の向上(グレード4からグレード1への成長)、サンゴ礁の保全(自給自足を目的としたダイナマイト漁の消滅)、海岸線の利用形態の変化(所有権の認められない海岸線の観光施設による囲い込み)、環境劣化(海浜への硫化物の堆積)、富の偏在の可能性などの影響が見られることが明らかになった。
次年度以降、詳細な分析を加える予定である。

海岸線の様子
豊富な魚介類

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