現地報告 Bioremediation現地実験-1

フィリピンにおける共同研究
水産学部 水産生物・海洋学分野 鈴木廣志 教授

2009年2月19日-27日の日程で、アジア研究教育拠点事業(日本学術振興会)の一環として行っている共同研究のためにフィリピン、ミアガオにあるフィリピン大学ヴィサヤス校およびタクロン島の同大学付属実験場を訪れた。今回は2名の指導学生(松岡卓司君、永江万作君)を帯同しての訪問であった。本共同研究は2006年8月に発生したタンカーSolar Iの座礁による重油流出に関連して、微生物分解による漂着油除去(バイオリメディエーション)の野外実験で、漂着油分解物の底生生物に対する影響を確認するためのものである。Dr. Norte-Campos ならびに彼女の指導学生であるMiss. Genitoをカウンターパートとして2009年2月から開始した。その実験の詳細は別の機会に譲るとして、当初の予定では今回の訪問は実験開始後1年後の状況を調査するものであったが、残念ながら実験器具が夏の台風等により流失していた。そこで、今回はこれまでに得られた試料のラフソーティングと結果の概略を得ることを主目的とした。訪問期間後半の24日-26日に、ミアガオのフィリピン大学ヴィサヤス校にあるDr. Norte-Campos研究室で、研究室スタッフの助けもあり、短い滞在期間ではあったが概ね目的は達成できた。
また、今後の新たな共同研究としてタクロン島周辺の生物相、特に甲殻類相を中心とした研究に着手することも話し合い、今回はその予備的、基礎的調査を行った。21日午前中に、島のリーフ側から北の浜へ歩いて探索した。予備調査の限りでは、生物相が必ずしも豊富とは言えないが、マングローブ側には、オカガニ類やスナガニ類の巣穴が多数観察された。夜間観察では、ミナミオカガニ、サキシマオカヤドカリ、コムラサキオカヤドカリなどと思われる甲殻類が多く観察できた。また、22日にはタンド島の飛沫転石帯を調べ、イワトビベンケイガニ、ヤエヤマヒメオカガニなどの生息を確認した。
以上のように、今回は継続調査はできなくなってしまったが、新たな共同研究の予備調査ができ、充実した訪問となった。

マングローブ林に設置した実験器具
ラフソーティングの様子
周辺に多いコブヒトデ

 

マングローブ林に設置した実験器具
タンド島の飛沫転石帯

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